死神と女神の狭間 第四章  

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 廊下の先を、侵入者がやってくる。
 にわかに周辺の空気があわただしくなる。侵入者に遭遇した兵士の声を聞いた鉄兵隊が、がしゃがしゃと鎧の音を立てて次々と動き出す。
「本当に来たのか……。いまの声からすると、すぐそこまできていそうだな」
 ウェインの横にいる気のいい兵士がつぶやく。彼はすでに剣を抜き、臨戦態勢を整えていた。伝令役であるため、鉄兵のような重厚な防具は身につけていない。もし敵がこちらにやってきたとすれば、剣一本で勝負するしかない。いつもはフランクな彼の顔にも、緊張が走っていた。
 ウェインにもそれは同じだった。物見の塔で見た四人の侵入者が相手だとしたら、とても勝ち目はない。彼らは、自分の師匠であるフェルトールを破ったのだから。
 死の予感が、ウェインの心にかぶさろうとしていた。
 二人の前には『溝』がある。廊下の角の手前にあるそのくびれた箇所には鉄兵が立ちふさがっているため、容易には突破できないはずだった。その間に待ち構えるか、それとも逃げるか。ウェインは選択に迷った。
 だが結果的に、その選択の猶予さえ、彼らには与えられなかった。
 廊下の角を曲がって侵入者が現れる。長い黒髪を振り乱しながら走ってくる、全身黒づくめの女。
(――リースリング)
 ウェインは忘れもしないその顔に気づいた。深い紫色の目をもった、色の無い顔の殺し屋。師匠と妹に死出のナイフを振るった張本人。全速力で廊下を駆けてくるその影のような姿が、鉄兵のふさぐ『溝』の先にわずかにみえた。
 鉄兵が槍を構える。『溝』にはひと一人分がやっと通れる幅しかない。リースリングがいくらすばやくとも、その脇を抜けていくことは難しい。しばらくはそこで足止めされるはずだ。そうウェインは思っていた。
 だが次の瞬間、彼は自分の目を疑った。
 廊下の左右には隙間は無い。だが、上には高い天井との間に十分な空間がある。
 リースリングはそこを、通った。
(――――!?)
 彼女は地面を蹴って高く跳び上がると――
 鉄兵の頭上を、越えた。
 最頂点で体をくるりと前転させ、リースリングは鉄兵の真後ろにすとんと着地した。まるで、投げ上げたボールが軌道を描いて地面に落ちるように。
 人間業ではない。人の背よりも高く、彼女は跳んだ。
 だが本人は当然のように、無表情のまますぐさま走り出す。おそらく驚がくしているであろう鉄兵は、ようやく見失った相手を自分の背後にみつけ、振り返ろうとしたところだった。だがその動きの速さはリースリングに比べ、鳥と亀ほどの差があった。
 そして彼女の先には、固まったままのウェインと剣を構える兵士がいた。
 ウェインは、信じられない速さでこちらに向かってくる侵入者に戸惑った。逃げる間もなく、彼はリースリングと向かい合う。いつもと同じ、色の無い表情で彼女が迫ってくる。
 気づいたとき、彼女は右手に二本のナイフをもっていた。
 ウェインの脳裏に、物見の塔の記憶が鮮明によみがえる。
 あのナイフで、師匠とウェラは――。
 とっさに、彼は自分の前面に魔法のバリアを張る。詠唱なしで発動する、簡単な物理壁。
 張ったと同時に、衝撃が彼のバリアに伝わる。バリッと、なにかがはじかれる音がする。
「うっ……!」
 ウェインがおもわず身を引く。バリアの向こうに、壁ではねかえされたナイフがみえた。
 彼がバリアをはろうとしたときには、すでに彼女の腕からナイフが投げ放たれていた。
 全てがワンテンポ速いリースリングの動きに、ウェインは頭も体も全くついていかない。
 彼はなんとか体勢を戻そうとする。だが次の瞬間には、リースリングは自分の横を通り過ぎようとしていた。
 アメジストの瞳をもった無表情な彼女の顔が、ウェインの真横を風のように過ぎ去る。
「あっ――」
 ウェインは、彼女の姿を目でとらえようとする。だが――
 ふりかえったときには、彼女はすでにウェインのはるか先にいた。
 なにもできないまま、ウェインはその場に立ち尽くす。遠ざかる侵入者の残像のような後姿だけが、彼の目に映っていた。
 ――と。
 彼の耳に、ガシャンとなにかが落ちる音がした。
 ウェインは右を見る。そこに、倒れた兵士の姿が見えた。
「――!?」
 彼はすぐさましゃがみこんで兵士の様子を確かめる。
 ウェインは、がく然とした。
 ナイフが――リースリングの投げはなったあの悪魔のような小ぶりのナイフ、そのうちの一本が、兵士ののどもとに突き刺さっている。
 兵士は目をむいたまま、一体何が起きたのかあまり理解していない表情で、冷たい廊下に顔をつけている。もはや自発的に動く気配はない。のどにある傷口からはおびただしい出血が始まり、閉じた口元からも鮮やかな赤色がもれてきていた。
 兵士は、すでに絶命していた。
 ウェインは青ざめながら、さきほどまで自分に声をかけてくれていた兵士を見つめた。残酷な現実に、思考が追いついていなかった。
「そんな…………そんな…………」
 ウェインは無意味なことと知りながら、兵士をゆすってみた。だが力ないその体は、彼にいま起きた事実を改めて認めさせる効果しかなかった。
 ウェインは思わずあとずさった。死を、これ以上ないほど間近に感じていた。
 あの瞬間――
 魔法で防護壁をつくっていなかったら――
 つくるのがわずかでも遅かったら――
 僕も、死んでいた。
 ウェインは、生と死の狭間にいた自分の境遇に、恐怖した。足から力が抜け、その場に座り込みそうになるのを、彼は必死に耐えた。
 物見の塔にいたときにも、人の死をみた。身近な人の死も、目の当たりにした。だが、自分が直接殺されそうになったのは、初めてだった。
 人と人との命の奪い合い。
 これが――戦い。
 ウェインが物見の塔で見たのは、戦いの残骸だった。あるいは、観客としての戦いだった。自分はそこにいなかった。いや、いたのだが、自分が入り込む機会はなかった、とした方が正しい。
 だがウェインは、選択の余地もなく、とつぜん命を賭けさせられたのだった。
 ぼうぜんとするウェイン。その耳に、今度は聞き覚えのある大きながなり声が届いた。
「若造、侵入者はこの先か!」
 しわがれた声で呼ばれるのに、ウェインは振り返った。鉄兵隊隊長ノガンの姿が、彼の目に映った。
 五人の鉄兵をつれ、ノガンは重い鎧をものともせず走ってくる。われに返ったウェインは、老兵の呼びかけに答えた。
「は、はい! むこうに行きました!」
「よし、このままやつを北東の区画まで追いつめるぞ!」
 ノガンは背後の部下たちにむかって云うと、倒れた兵士に目もくれず、また走り始める。激しい金属音を鳴らしながら、彼らはリースリングの通った道を追っていった。
 ウェインは彼らの光景を目で追ってから、再び足元で倒れている兵士に目をやった。
(リースリング……)
(このままじゃ……僕は……)
 彼はガダルカではあまりなじみのない魔法使いである自分にも、隔てなく親切だった兵士の記憶を思い出し、ふるえる心をしばりつけた。足に力を入れ、ノガンらが走っていった廊下の先を見すえた。
(枠の外にいたら……)
(枠の外にいたら、なにもわからないんだ)
 ウェインは駆け出した。ノガンらの走るさらにその先の、黒く深い影を追うために。










 三階の鉄兵隊の動きが、あわただしくなってきた。
 普段使われない裏の階段から侵入者がのぼってきてから、ノガンが廊下を駆け回り始めた。『溝』の兵士は固定しつつ、城内を自由に動き回る遊撃隊が侵入者を追いつめる。それが、彼らの作戦だった。
 しかし、ノガンは通り過ぎた『溝』の鉄兵から、信じられない報告を受けた。
「侵入者は……私の、頭上をこえていきました……」
 はじめはウソをつけとつっぱねたが、その兵士の引きつった顔が言葉の信ぴょう性をあらわしていることに、ノガンは気がついた。
 とはいえ、常人には不可能なことだった。どれだけ脚力がある人間でも、人の背よりも高くジャンプすることなど、考えられなかった。またふざけた魔法でも使ったのでは。ノガンはそう推測しつつ、侵入者を追い詰めることに全力を注ごうとした。
 しかし、溝がこのようにあっけなく突破される以上、彼らの足ですばやい侵入者を追うことは難しい。ノガンはそう思いつつも、侵入者がどこかで足止めを食うことを期待しつつ、できるだけの追跡を試みようとしていた。
(北東の区画にある溝は天井が低いから、そこへ行ってくれれば溝を容易に破ることはできないはずじゃ。しかし――)
(階段にいた隊員は、殺されていた。おそらく声を上げてすぐに――。防具のすき間を正確に狙いぬいた、『きれいな』殺傷じゃった。やつは間違いなく、そうとうな手だれじゃ。だとすれば、天井が低くても溝は破られるということか)
(追いつけるか――? じゃが、やらねばしかたないわ)
 ノガンは強じんな体で城の廊下を走る。途中、二つの溝を通過したが、いずれの兵士も頭上を越えられていた。ぼう然とする鉄兵をあとに、彼は侵入者を追い続ける。
 四階への階段は二つ。ひとつは普段利用される中央の大きなもの。そしてもうひとつは、北東の区画にある非常用の小さな階段だった。
(中央の階段はもう通り過ぎたな――では、やつは北東の階段からのぼるに違いない)
 足跡をたどるように『溝』を通り過ぎながら、ノガンはようやく北東の区画に入った。ひとつめの『溝』の鉄兵に呼びかける。
「侵入者は向こうか!?」
 階段へ行くには直進。当然、まっすぐ進んでいるのだろう。ノガンは考えたが、
「い、いえ。そこを左へ曲がって……」
「なんじゃと?」
 ノガンが思わず足を止める。
「直進したのではないのか? 本当に左に曲がったんじゃな!?」
「は、はい。左へ行きました。それより隊長、侵入者が私の頭上を――」
「もう聞き飽きたわ!」
 ノガンが再び走り始める。ほぼ城の反対側まで、かなりの距離を走っているはずだったが、ノガンをはじめ後ろからついて来る鉄兵はひとりも息を切らさず、ここまできていた。
 ノガンは迷いなく左に曲がる。階段へ行くなら直進のはず。だが、侵入者は左に曲がった。なぜか――。理由がノガンには思いつけなかった。だがいまはひたすら追うことが先決だった。
 本当に左なら、ノガンにとっては願ってもないことだった。なぜなら左は――
 角を曲がったところで、ノガンは思っていたとおりの光景を目にした。
 左は、布団やシーツなどをしまう物置につながっているだけ。つまり、行き止まりだった。
 ノガンがみたのは、侵入者がこちらをふりかえり走ろうとするのをとどまる光景だった。行き止まりとわかり、道を戻ろうとするところを、ノガンらがふさいだ格好だった。
 ここでようやく、ノガンは侵入者と対面した。
 ノガンは驚いた。全身にタイトな黒い服をまとった、影のような人物。丸みのある体のラインに、幼さの残る顔つきは、どうみてもこの戦いの場にそぐわない、まだ二十歳に満たないだろう若い女性の姿だった。
 本当にこの女が、鉄兵ひとりの命を手際よく奪い、人の身長をこえるほどのジャンプをみせるのか。ノガンには全く信じられなかった。
 長い漆黒の髪に鋭い紫色の目を光らせながら、侵入者はやや距離をおいてノガンの方をにらみつけてくる。その様子はノガンに、路地裏の狭い通路でおいつめられた黒猫を連想させた。立ち止まり、対峙するノガン。
「よくここまでわしらをかきまわしてくれたな。じゃが、道を間違えたのが運のつきじゃ。降参するならいまのうちじゃぞ」
 彼の言葉に、侵入者の女は返事をしない。ただ目線を周辺に泳がせるだけ。おそらく逃げる方法を思案しているのだろうと、ノガンは感じた。だが、後ろは行き止まり。前にはノガンを含め鉄兵が五人。天井が低いため、自分たちの上を飛びこえるという得意の芸当もここでは使えない。この状況から逃げのびる手段があるとは思えなかった。
 そんな彼女の様子をみていると、ノガンは記憶のすみに、なにかがひっかかるのを感じた。
(こやつ……そういえば……)
 黒い髪に、紫の目。若い女――。



「黒く長い髪に、紫色の目をしている。細身で、背は並。あと、若い。たぶん、ラッシュよりも若いだろう。まだ二十歳にもなっていないように見えた。一度見ればあの顔立ちは忘れない」

 ナイフや石を投げつけるという方法で闘う。人の身長より高く飛び上がる。左腕で刃物を受けとめる。そこから一滴の血も流れない。一瞬のうちに遠く離れた場所まで移動する。

 人の身長より高く飛び上がる。

「名前? ああ――リースリング、というらしい。本名かどうかわからんが。うちの村の者はその女のことを『死神』なんて呼んでいたが」



 前日、城にやってきたダグラスの言葉が、彼の頭によみがえってきた。
 黒く長い髪。紫色の目。細身で、背は並。まだ二十歳にもなっていない。人の身長より高く飛び上がる。
 彼の云っていた『死神』の特徴と、目の前の女の特徴が、完全に一致している。
 ノガンはいっそうけわしい目つきで侵入者をにらみつけながら、彼にしては静かな調子で云った。
「お前さん……もしかして、リースリング、という名前ではないか」
 その瞬間、これまで厳しい顔つきだった侵入者の女の顔が、面食らったようにほどけた。そしてすぐさま、疑念の色を浮かべる。
「……どうして、私の名前を……?」
 はじめて口をきいた彼女に、ノガンは答えた。
「以前お前さんと闘った者がわしに忠告しにきたのじゃ。ヴェルタ村で警備隊長をしていたやつがな」
 その質問には、女――リースリングは口をつぐんだ。ノガンはかまわず話す。
「むこうでは盗賊らに加担して、罪の無い者を大人も子供も関係なく殺しておったそうじゃないか。かと思えば、今度はベル王弟が狙い――お前さんもしや、プロの殺し屋じゃな」
 彼の言葉に、リースリングは緊張した体勢を保ったまま、ノガンの方をにらみつづける。
「……だったら、なに」
「なにもかれもあったもんじゃないぞ。お前さんみたいな若い女子が、暗殺術のようなものを身につけているその存在自体にわしは驚いておる。お前さん、どうやってそんな技術をみにつけたのじゃ。いや、そもそも……どうしてこんなことをしておる? そんな歳で、もう何人殺してきたんじゃ?」
 ノガンは問い詰めるというよりもむしろ心配するような目つきで、リースリングの方を見やる。逃げ場の無い通路の奥に追いつめられながら、ひとつ音を立てたとたんにはじけて牙をむいてきそうなほど攻撃的な視線をこちらへ刺しこんでいる。その凶暴な雰囲気が、彼女のしなやかな若い姿と不釣り合いだった。
 ダグラスの云っていたことが本当なら、この女はさらに、長い距離を一瞬で移動し、左腕で刃物を受け止め、そこから血を一滴も流さない能力をもっている。――それを『能力』といっていいものなら。
 謎の多い女。だが確かなのは、ここでこの女を捕えなければ、またサガン国にとって害をなすだろうということだった。
 ノガンは抵抗をあきらめさせようと、さとすような口調で呼びかけた。
「あきらめろ。ここは行き止まりじゃ。もうお前さんが逃げる場所はない――」
 そう彼が云った瞬間。
 リースリングがとつぜん、右手を振り上げた。
 ノガンが説得を試みようと彼女の方へ歩み寄りをみせるときにできる心のわずかな隙を、彼女は狙っていた。
 ノガンにはみえなかった。
 自分の眼前に、彼女の細い手から放たれた、鋭い針が飛んでくるのが。
 彼がようやく知覚したのは、その狙いすまされた針が自分の右目に突き刺さってからだった。
「ぬっ!?」
 とつぜん目に痛みを感じるノガン。この時点で、まだなにが刺さったのか、彼にはわかっていない。彼はやや体勢を崩しながら、右手で状態を探ろうと必死になる。後ろの鉄兵らも、ノガンの異変に気づき、声をかけようとする。
 その張りつめた体制が崩れる瞬間を、リースリングは見逃さなかった。
 ノガンの目の前から、彼女の姿が消える。
 正確には、常人には不可能なほどの目にも止まらない速さで、彼女は正面から鉄兵らのふところに潜り込んでいた。
 一瞬でノガンの横を過ぎ、後ろにつめていた兵士らの肩の上と低い天井との間にわずかにあいたすきまを、ひと跳びですりぬける。猫が全速力で彼らの周りを走りぬけ、逃げていくような動き。
 常人では考えられない能力を、また彼女はみせた。
 兵士らがその姿をとらえたのは、すでにリースリングが最後尾の鉄兵の後ろに降り立ったときだった。
 ノガンは、目にケガを負いながらも、どの鉄兵よりも早く後ろを振り返っていた。目が彼女の動きをとらえていたのではなく、彼女が「なぜ自分に針を投げ放ったか」の意図を読み取った結果だった。
 驚き。戸惑い。そうした感情の生まれる瞬間、人間には隙ができる。
 そのわずかな時間を、彼女――『死神』リースリングはたくみにあやつった。
「追え! やつは後ろじゃ!」
 右目の激痛をこらえながら、彼は部下に指示する。ようやくリースリングの姿をとらえた兵士らは、通常の人間ではありえない彼女の動きに混乱しながら、すぐに駆け出した。
 だが、すでにリースリングの姿は、彼らから離れた通路の角にあった。
 もしさきほどみせた「猫のようなすばやい走り」をいまもされていたら、とっくに彼女の姿は通路の先へ行ってしまっているだろう。だがなぜかいまは普通の――常人の速さの走りになっている。それでも、やや距離を離された状況で身軽な彼女に鉄兵らが追いつくことは、難しいようにみえた。
 しかし、ノガンにはもはや追うことしかできない。
 右目に刺さった細い針を彼は思い切って引き抜く。はじまる出血とさらなる痛み。だが、いくつもの死線をくぐりぬけてきた彼は、そのくらいの痛みで倒れ伏すようなやわな戦士ではなかった。
 前を走る部下たちを追い抜かんばかりに、ノガンは右目をふさぎながら全速力で走る。侵入者を捕える絶好の機会を逃したことへの自責が、彼の足を前へ、前へと押し出す。
 角を曲がると、長い直線。そこで、ノガンはおもわぬ光景を目にした。
 前を走る兵士。先へ逃げるリースリング。そのさらにむこうがわに、人影がみえた。
 ローブをまとった魔道師の青年が、こちらへ走ってきている。
 ノガンは見覚えのある彼にむかって、大声を上げた。
「若造! そいつを止めるんじゃ!!」
 彼の残った左目に、切迫する青年の表情が見えた。




 
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